私の最初の本棚は、三段のカラーボックスでした。
以来何度も本を整理したり、本棚が変わったりしながら、それでもずっと残っている本が何冊かあります。
カバーもなくなり色あせたこの本は、そのうちの一冊です。
<触れもせで>というエッセイ。
なぜかこの本があると本棚が落ち着くというか、私自身がほっとします。
優しい暖かな気持ちになれるというか…。
久世さんはきっとプロデューサーとしては厳しい方だったのではと思います。
勝手なイメージですけどね。
でもこの本の中では向田邦子さんへの愛情というか友情というのか、優しさで満ちています。
少し悲しいようなちょっと気恥ずかしいような気持ちになる…なんだかラブレターでも読ませてもらったような申し訳ない切ない感じになります。
こんな風に、距離感があるけど信頼関係が揺らがないような、それでいて何だか微妙な仕事を通した男女の友情に似た愛情って、じつはありそうで中々無いと思います。
今は懐かしい昭和の時代のよさと、今も変わらない人と人の繋がりの優しさを、フワッと思い出させてくれる秀逸なエッセイですね。
中でも特に、<ゆうべの残り>が好きですね。
うちで人気のゆうべの残りは、煮物やもちろんカレーもですね。