先週から毎日がバタバタと忙しかったです。
落ち着いて自分の事が出来ず、煮詰まり気味でした。
さすがに月曜日にはパンクしそうで、午後からショッピングセンターへ息抜きに。
日常をエスケープして、一人ウインドウショッピングもどきをしながら、本屋さんで手にした本を持って隣のカフェで読んでいました。
いつもは割合ポジティブなほうですが、さすがに疲れ気味のせいかネガティブなタイトルに目が行き、手にした本が「絶望名人 カフカの人生論」
ちょっとネガティブすぎるタイトルですが、
表紙のイメージがそんなに暗い感じではなかったのもあってか、なぜか手に取り買ってしまいました。
カフェでコーヒーを飲みたかったのもあります。
カフカといえば、不条理な世界観を書いた小説が有名な小説家さんだと思っていましたが、実際は読んだことがありません。
そんな奴がなんだよ。。とか言われそうですが。
読み始めると内容は、とにかくすべてにネガティブな言葉ばかりなんです。
おいおい、どこまでネガティブなんだい!
と、心で突っ込みながら、
それでも、その心情に寄り添うように、訳者の頭木さんの解説が丁寧にやさしく添えられています。
例えば、第1章の初めに書かれているのが、好きな女性に書いた手紙の一文だそうです。
将来に向かって歩くことは、ぼくにはできません。
将来に向かってつまずくこと、これはできます。
いちばんうまくできるのは、倒れたままでいることです。
「絶望名人カフカの人生論 カフカ/頭木弘樹編訳 新潮文庫より」
えっ?えええ??
好きな人にそんなこと言うの?それも手紙で。。
正直っていえば正直だけど。。ドン引きされそうだが(苦笑)
そんな一文にも頭木さんのやさしい解説が書いてあります。
そんな感じで、次々とカフカの(心の声なんでしょうね。。)ネガティブな言葉が続きます。
そのうちに、あまりにそんな言葉ばかりで笑えてくるんですよね。
なんだか、小さな子供が「ぼくできない!」って途方に暮れて言っているようで、
確かにそういうこともあるよな。。。なんて、共感する部分も出てきたりして。
20世紀のもっとも偉大な小説家ともいわれるような人が、こんなにも自信喪失のような、もしかしたらどこまでも自分に厳しいのか?よくわからないネガティブパワーの塊のような思いで生きてきたんと思うと、ちょっと切なく感じる心情になりました。
小説の内容が不条理だといわれるゆえんは、カフカのこの性質からきているのかもしれませんね。
誰もが、日々暮らす中で、その日常での出来事をどう捉えて過ごしていくのかで、その人生は出来上がっていくということでしょうか。
ポジティブもネガティブも、そのどちらかだけでは、生きるのも暮らすのも大変でしょうね。
人それぞれ感じ方は違うけれども、この人生には、そのどちらも程よく感じて過ごせたなら、それほど息苦しくはないかもしれません。
この本のカフカの言葉は、人生の中のネガティブな心の声を代弁してくれているように感じます。
ネガティブなのに、シュールな笑いを誘うような世界観が、疲れていた私にはなんだか心地よかったです。
頭木さんのカフカを大切に思う熱い思いもすごく伝わる、秀逸な一冊だと思いました。
お好きな飲み物を傍らに置いて、読んでみてほしい一冊です。